
それがいつ頃から
いつ頃までだったか
曖昧なのでとりあえず
10代の頃としておこう
あの頃の夏は毎年特別なものだった
たとえ思い出に残るようなことが
何一つ起こらなかった年であっても
自分の身体にモヤモヤと変化が兆し
まるで満月の夜の磯辺の蟹のように
モゾモゾと動き出す
いつも必ず憧れの女性はいて
四畳半フォークに慰められる定番の夏
そうそうそういえば
”特別”の意味合いはだいぶ違うが
去年の夏も少し特別なものだった
最後の札幌
集まってくれた子供たちと訪れた
小樽の祝津海岸
あの夕日は忘れない
これから先
いくつかはあるのだろう
少し特別な夏
しかしそれはきっと
郷愁の確認作業に過ぎない
やはり
若かりし夏の日々
あの鬱屈と少々の爆発は
通過儀礼だったのであり
だからあの感覚は
もう二度と
やっては来ない